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23/10/13

アルゼンチンのおしゃれな映画--ブエノスアイレス恋愛事情

気温が下がってやっと秋めいてきた関東地方ですが皆様いかがお過ごしでしょうか。
ブエノスアイレスから戻ってきて、はや半年が経とうとしているスタッフMです。1年も住んでいたというのに、日本に帰ってきたとたんにいろいろ忘れてしまい、「あれ?去年、、何処にいたんだっけ?」となっている今日この頃です。私が忘れっぽいというのもあり、東京で吸収する情報が多すぎるというのもあるかと思うのですが、ブエノスアイレスという街の特徴の一つとして、様々なものが通過していく場所であるから、ということもあるのではないかとも思ったのです。

地元の人によるとブエノスアイレスに住む日本人は数が少なくて、たいていが1年か2年の滞在だそうです。日本人に限らず外国から来た多くの人がなんらかの事情でやってきて、また何処かへ去っていく。なので地元の人は「va y viene」=「去って、来る」という人の行き来に慣れています。そんな街の人々は外国人である私をすんなりと受け入れ、あっさりと見送ってくれました。外国人だけでなく、そこに生まれ育った人々もまた、何かの途中である、のかもしれないな、ということを思わせてくれたのが今回ご紹介するこの映画、『ブエノスアイレス恋愛事情』です。

Medianeras

配給は前回ご紹介した、『地中海式 人生のレシピ』と同じく渋谷の元気な映画配給会社Action inc.さんです。製作は2011年、監督・脚本はブエノスアイレス生まれのグスタボ・タレット、主演は『シルビアのいる街で』のピラール・ロペス・デ・アヤラとハビエル・ドロラス。物語は大都会ブエノスアイレスの片隅に住む独身の男女がすれ違いながら本当に自分が求めている相手に出会うまで、を描いたもの。

この映画を見てまず思ったのは、これは私の知っているブエノスアイレスだなあ、ということです。私が滞在したのが2012年なので、映画の製作年と近いからというのもあるのですが、それ以上に変わり行くブエノスアイレスの「今」をとてもよく捉えていると思いました。特に計画性もなく新しいビルが次々に生まれていく一方で大昔の建物が残り、古い地下鉄車両が走っている。大通りは常に通行人で溢れていて、予告なく停電がおきる。主人公のマリアナ(ピラール・ロペス・デ・アヤラ)とマルティン(ハビエル・ドロラス)が住んでいるのは、ブエノスアイレス市内を縦断するサンタ・フェ大通り。何キロにもわたって商店が続くにぎやかな通りです。二人は間に数件おいて並ぶマンションの上階にそれぞれ住んでいます。オリジナルタイトルの「medianeras」はClaveの辞書によるとque está en medio de otras dos(二つの物の間にあるもの)。この映画では具体的にはマンションの外壁を指しますが、もちろん二人の主人公の間、も暗喩していてなんとも気の利いたタイトルになっています。

この映画の特徴のひとつは、細部にとても凝っていること。重要なモチーフから画面にちらりとしか出てこないものまで、作り手のこだわりが出ていて思わずニヤリとなってしまいます。見終わった後に、「あそこに出てたアレ、コレだよね」と語り合いたい点がいくつもあって、このマニアックさが物語全体に面白さを与えています。私(だけ)にはわかる、と思わせる親密な感じが映画全体に流れているから、見ていて飽きないし何度でも見たくなります。アトムやウォーリー、ビールの銘柄や音楽などアルゼンチン産でないものもたくさん詰め込んであるので、ブエノスアイレスを知らなくても、「おっ」と思わせるところはきっとあるはず。

主人公のマリアナを演じた女優はスペイン人ですが、この映画ではアルゼンチン風のアクセントで話しています。ではポルテーニャ(ブエノスアイレスの女の人)に見えるかというとそうでもありません。しかしむしろ、その「なりきってないところ」がかえっていいなあと思いました。この人から感じるヨーロッパの香り、異国に住む外国人のような頼りなさ、がブエノスアイレスの街の孤独感を表すのによく似合っています。他に登場している女優、ブエノスアイレス名物、犬の散歩屋を演じたイネス・エフロンや典型的ポルテーニャ役のカルラ・パターソンにはラテンアメリカ女性特有のたくましさが感じられるのですがピラールにはそれがありません。彼女のはかなげな存在感が都会に生きる所在のなさを際立たせていて、そこに見ていて惹きつけられるのだと思います。これがアルゼンチンが誇るコメディエンヌ、カルラ・パターソンだったら一人でも楽しく生きていけそうだもの。監督が『シルビアのいる街で』を見てピラールに出演を熱望したというのもうなづけます。

一方、男性陣はどうかというと、マルティンを演じたハビエル・ドロラス、マリアナの元恋人(←某有名作家が演じています。ふふ)、マリアナにアプローチする男性たち。みんなお洒落で格好いいけどどこか弱々しい。この雰囲気が何かに似てるなあ、と思ったら監督はウッディ・アレンのファンだそうで、ああ、確かにウッディ・アレンの描く男性に近いかもしれません。都会では男性らしさをアピールできる機会がほとんどないから、どこか滑稽になってしまうものなのかもしれませんね。ついでに言えば、昔のウッディ・アレンの映画の第3の主人公がニューヨークであったように、この映画でもブエノスアイレスという街が重要な要素を担っています。今、ニューヨークもロンドンもパリも住居費が高騰し、街の中心部に若者が一人で住むのは難しくなっているでしょう。ブエノスアイレスも物価は安くありませんが、まだそれでも、「何者でもない」若者がふらりと住み着いてとりあえず暮らしていくことのできる、もしくはそう描いたとしても不自然ではない、大都会なのではないかと思います。

映画の中の季節も「短い秋を経て長い冬」に向かっていきます。日本もこれから寒くなっていく今の季節にぜひお勧めの映画です。かくゆう私ももう一度見に行くつもりです。できればDVDも欲しい。比嘉さん(Action incの社長、カッコいい大人の女性です)DVDも発売してくださーい!

11月16日(土)より新宿K's cinema他 全国ロードショーです。
公式サイトはこちら
http://www.action-peli.com/medianeras/

予告編はこちら
http://www.youtube.com/watch?v=Y2tFlmlxfYw&feature=youtu.be&a

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